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私達が人間を辞めた日
第6章 愛しい人

既に心が折れそうだ...
「洗浄」という行為に泣き叫ぶ私は強引に体の隅々迄触れられた。
余りの生理的拒絶に暴れる...蹴られる...それでも暴れる...蹴られる...
少し前迄花嫁だった私の体は痣にまみれてしまった...
一際豪華な扉の前に立たされると...せめて少しでも心を落ち着かせようと唯一身に付けた指輪に触れる...涼が左手の薬指に着けてくれた...指輪。
「ああッ!!」
涼との思い出に浸っていた私の背中が蹴られ、いつの間にか開いていた扉の向こうへと体が投げ出され...俯せに倒れた。
「遅かったな...」
無線機で聞いた低い声...作業服の男はリードをその声の主に渡しながら言う。
「申し訳ありません!!11番は特に暴れまして...」
「...まあいい...準備しろ...」
「はい!!それと7番が減点なのですが」
「ああ...アイツか...後で構わん」
「はい!!」
作業服の男二人は直ぐに部屋を出る...
私はゆっくり顔を上げた...この男が...寿...
怖い...あまり男が好きでは無い私にとってこの暴力的な気配は強烈過ぎる...
どこまでも朗らかでどこまでも穏やかな涼だからこそ私は惹かれたのだ。
不甲斐ない限りだが先程の少女が助からないらしい事を気に停める余裕等持てない...
「...あの...涼ちゃんは...?」
なんとか震える声を絞り出す...寿なら答えてくれるかもしれない。
しかし...その問の答えはリードを引く手...その力に首が折れると思う程の...
「あっ...」
体がベッドに沈み...覆い被さる寿...
この時の私は気付けなかった。
涼の安否を必死に問うても...私がどれだけ涼を愛してるのか態度に出しても...
寿に新しい玩具を与えているだけだという事に...

