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喘ぐなら、彼の腕の中で
第10章 一発KO

「木村、この前言った提携先リスト更新したか?」
「ハッ!! すみませんまだ途中で…」
「どうせそうだろうと思って優待No.までまとめてやったから。
お前の担当分だけ今すぐ追加しろ」
「え!? は、早! ウソでしょ!?
宮本さんいつの間に…」
「喋るな、手動かせ。
昼メシ食ったらすぐ出るぞ」
月曜日、あと10分で正午になる社内。
パーテーションの後ろから、営業部の会話が聞こえてきた。
パソコンに向かって図面の修正を行いながらも、無意識に耳を澄ましてしまう自分がいる。
「……」
パーテーションに貼り付けたPOPを確認するフリをして、チラッと営業部に目を向けると
後輩くんが尊敬の眼差しを向けるその先に、鬼のような早さでブラインドタッチをする莉央が見えた。
「宮本さんってやっぱりスゲエなぁ。
早いしスマートだし結果出すしクールだし…」
「黙れ、その口塞ぐぞ。
憧れる前に反省しろ」
………2日前
人気キャラクターの着ぐるみと握手して喜んでいた男と、あれは同一人物なんだろうか。
私は無言のまま席についた。
……ギャップありすぎ。
思わず心の中で呟いてしまう。
─── 2日前の土曜日。
カフェの駐車場で、時間を忘れるくらい長いキスをしていたけど
帰りの車の中は、ほとんど会話をしなかった。
それでも
私のマンションまで送ってくれて、軽くお礼を言って降りようとした時
運転席から莉央に声を掛けられた。
『沙月。
芹澤は “ 思い出フォルダ ” に入れるな。
即抹消しろ』
『………!』
『お前は十分頑張ったんだ。
リセットして、月曜からまた沙月の思うまま進めばいい。
……大丈夫だよ』

