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喘ぐなら、彼の腕の中で
第14章 爆発

「……懐かしい記憶」
資料室までの通路を進みながら、あの日の情景を脳裏に浮かべた。
結局沙月は俺の手を振り払って、そのまま走って去っていって
海に1人残された俺は、自分の手を見て立ち尽くしていた。
………どう足掻いても
俺が誰かの為に出来ることは無い。
俺がいることで、彼らの本当の想いが彷徨ってしまってる。
母さんや兄貴や沙月が、俺を受け入れてくれるのは感じているし
天国の母親がくれた命の重さは、充分理解しているから
死んで存在を消すわけにはいかないけど
この時から、時々何の為に生きてるのか分からなくなっていた。
それから
自分の中でポッカリ穴が開いたと同時に
以降は何も求めず、常に “ 無 ” の精神でいられるようになった。
悩んでも、迷っても結果は同じ。
もし、あの時のように
大切な人の為に、感情のまま動いたとしても
結局俺の手は、誰を救うこともできない。

