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喘ぐなら、彼の腕の中で
第5章 忘れさせて
「……芹澤さん。
私今までずっと勘違いしてました」
「……!」
「半年前、一線を越えてから昨日まで……」
困ったな、声が震える。
確認もなにも、彼女じゃないってハッキリ言われたんだから。
結果は目に見えてるじゃない。
「芹澤さんに彼女がいることはもちろん、その相手が亜美だって知らなかったから」
心臓が飛び出そうなくらいバクバク鳴り響く。
ワイングラスをテーブルに置いた芹澤さんが、無言のままだから
スカートをぎゅっと掴んで、声を振り絞った。
「芹澤さんが好きなのは、亜美ですよね?」
……あぁ、言っちゃった。
あとはもう、彼から通告されるであろう最後のサヨナラを受け入れるだけだ。
真正面から亜美への想いを聞かされたら
諦めの気持ちも出てくるだろうし、この苦しみからも解放されるよね。
「………」
少しの沈黙が、永遠にも感じる。
「沙月」
芹澤さんの声で、ゆっくりと顔を上げると
彼は穏やかに微笑んだ。
「沙月が決めていいよ」
……えっ?
思ってもみなかった言葉に、ドクンと心臓が鳴る。
「沙月が望むなら、俺は沙月の傍にいるよ」

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