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喘ぐなら、彼の腕の中で
第5章 忘れさせて

「急がなくていいよ。
沙月がどうしたいか決まったら、答えを教えてね」
芹澤さんはワインを喉に流し込んで、腕時計に視線を落とした。
……何度も、何度も
私の髪を撫でてくれて、抱きしめてくれた。
今、この瞬間だって
その胸の中に飛び込みたくて、仕方ないのに……
「明日もお互い店舗周りで朝早いし、そろそろ帰ろうか」
芹澤さんは手を挙げて店員を呼んだ。
「………」
体が疼く。
今時……浮気なんて普通でしょ。
私が望めば、彼は傍にいてくれる。
形はどうであれ、これからもずっと一緒に………
「芹澤さん」
店員がカードを受け取り、一度引き上げると
私は静かに口を開いた。
「やっぱり、……です」
「ん? 何?」
1番になれなくても、愛してるから傍にいたい。
………だけど
「これからは
仕事以外で、芹澤さんとは会いません」
私は、あなたと体を繋げたいわけじゃない。
「……亜美を、泣かせないでください」

