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花の咲くころ
第5章 く
駿ちゃんが買い物に連れて行ってくれると約束した土曜日は
朝一番で電話が入って
「悪い」と
仕事に出かけてしまった。

駿ちゃんは仕事中毒だと思う。

「花、一人で買いに行く?」と聞かれたけど。
何かを買ってほしい訳じゃない。
駿ちゃんとデートの口実が欲しかっただけだ。

だから「今度で良いよ」と送り出した。

あたしはぶらぶらと映画を見に行こうと決めた。
違う!と自分で自分を否定してみるけど。
駿ちゃんの職場の近くに行って
お昼休みにでも偶然会えないかな。なんて期待してる。
そこで会えないとしても。
「早く終わったから一緒にご飯でも食べよう」って電話でも入らないかな。
なんて期待してる。

そんなに上手くいくわけないでしょ!って
自分を否定してみるけど。
それでも映画館なんかどこにでもあるくせに
あたしは迷わず駿ちゃんの職場近くの映画館に行く。

ぶらぶら歩いてるところで
「花ちゃん?」
と声をかけられた。

「あ・・・(確か)野口さん?」
「あ~!やっぱり。昨日はいきなりごめんね」

スーツを着ているところを見ると。
野口さんも今日は休日出勤ですか。
みんな良く働くなぁ。
たぶん夢ちゃんも出勤していると思う。

「一人?ってもしかして楠も出社してるの?」
「あ、はい」
「そっか。今、手が離せないプロジェクト組まされてるんだ。分かってやってね」
「はい」
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