この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第33章 出芽
「ラックー、これに見覚えはないのか? こうやって朱雀の模様を施して、朱雀を称えているんだぞ?」
『ふむ……』
ラクダはじっと見たが、頭を横に振った。
『まったくわからぬ。だが似たようなものがあるとすれば』
「「すれば?」」
サクとユウナに、ラクダは言う。
『棺だ』
「棺だって!? じゃあここは墓場ってことか!?」
サクは大きな石の建物を見た。
『そうだ。緋陵の民は石の棺を埋葬するのが習わし。これだけの大きな棺を使うものは、祠官か武神将とみる。だが我の記憶によれば、灰色の石を使うのは咎人のはず。普通は赤く染めた石を使うゆえに』
「だとしたら……」
サクは爆ぜたように叫んだ。
「ここはお袋の妹、ヨンガの骸があるかもしれねぇってことか!?」
『然り』
「ラックー、蠍に聞いてくれ。文字があって入れなかったというのは、ここの場所のことか。そして文字が書かれているとしたら、どこか」
『……すまぬ』
「は?」
ラクダは落ち込んだように頭を垂らした。
『我の言葉は蠍には通じぬ』
「はあああああ!? 友達だったんじゃないのか!?」
「蠍は、ラックーの言うことをきいて、あたし達を乗せてここまで……」
サクとユウナの言葉に、さらにラクダの頭は下がった。
『なんとなく、だ。なんとなく通じていたのだ。蠍は我らをここに連れたのは、あの幼女が指示したからだ。だから細かい指示は恐らく』
「だったらあのチビの方が優秀ってことじゃねぇか!」
『ぶへぇぇぇぇ! 我の方だ!』
「威張るな! 鼻水飛ばすな!!」
「ねぇ、ラックー。駄目元でやってみたら? 気心知れている蠍なら、きっとラックーの言いたいことをわかってくれると思うの!」
『ふむ……』
「真心よ、真心! あたし達だって、言葉が通じない大きな鷹に協力して貰えるんだから、朱雀のラックーならきっと大丈夫よ! 真心!」
『そ、そうだな……』