この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第36章 幻惑
――ワレハマダ、クイタラヌ。ジュクセイセシ、ナンジノニクヲクワセヨ。
いつの間にか、体を出入りする痛みの元凶は、闇から蛆へと変わっていた。
崩れていく己の体に、サクから本能的な戦慄の声が迸る。
自分は、こんな姿になってまでなぜ生きている。
この痛みを抱えてまで、生きたくない。
死にたい。
死なせてくれ。
――デハナンジヲ、モライウケル!
突如現れた、牙だらけの大きな口。
それがサクの頭をかみ砕こうとした――。
その時。
「えいえいえい!」
『ばへぇぇぇぇぇぇ!』
なにかの声と、嘶く声。
闇が薄れて、それが輪郭を伴ってくる。
それは――。
――コシャクナ、ナゼココヲキリサケル! ソノカタナハナンダ!
「サク! サク! 戻って来て!!」
その声は、愛おしくてたまらない姫の――。
「闇ではなく、あたしの手を掴んで!」
自分の手を拒んだはずの姫の――。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


