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吼える月
第18章 荒波
「任せて!! シバと頑張って!!」
「おうっ!!」
そして――。
「行ってきます、姫様」
「ええ。無事に戻って来て」
サクはユウナに笑って頷くと、あっと言う間にシバの元に駆け上った。
「遅いぞ、お前――っ!!」
「来てやっただけでもありがたいと思えよっ!!」
闘いが始まる――。
グォォォォォォ。
……サクは、状況を甘く見ていたのだ。
子供達にとっての恐怖心を。
初めて見る異形の存在、それは子供達に絶望的な恐怖を刻みつけた。
シバはやられる。
同等の力を持つサクもやられる。
だとすれば、誰があの怪物を倒すのだ?
テオンなど、ユウナなど、イルヒなど。
どう見ても弱々しい存在のあてにはならない。
――守りたいものを守るために必死になれ!!
"自分の命は自分で守れ"
掟のひとつがサクの言葉と重なり、子供達は必死に考えた。
生きるために。
自分の命を守るために、今できることは――。
青龍は"なにか"のために怒って現われたのだ。
だとすればその"なにか"を……、"不必要なもの"の排除を。
男達の聖域であるこの海を侵すものとは――。
その考えは伝染した。
「不浄とされる女がふたりも海で自由にいるから、青龍が怒っているんだ」
「女は……」
「そう、女は」
その時、シバとサクを相手にして暴れていた怪物が再び咆哮し、その目が夜空に浮かぶ凶々しい月のような、妖しげな赤い光を発した。
そして、それを背後から浴びた子供達は――。
「女は、青龍様が好物な捧げ物だ」
震え上がっていた子供達の目もまた、同じ色に染まる。