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吼える月
第21章 信愛
ギルがリュカの婚姻話をした時――。
ユウナの顔に浮かんでいたのは、他人事のような動揺ではなく、選ばれなかったということに対する悲しみ。
それは、サクにとっては嫌というほど味わい慣れたものだった。
ユウナ以外との婚姻を簡単に執り行ったリュカに対する悲憤を、自分以上にユウナから感じ取ったからこそ、サクは、疑似とはいえ…玄武の力が伝染するほど密に体を重ねても、それでもユウナの心からは男としてのリュカの影は消えていない厳しい現実を思い知った。
同時に、ユウナがリュカとの婚姻をどれだけ切望していたのかと思えば、婚姻を望まれなかった自分の姿に共振し、胸が張り裂けそうで。
あの時から沈静化していたはずの嫉妬心は煽られ、そしてユウナから出たシバの名で、サクの独占欲は昂じて爆ぜたのだった。
ユウナの愛が欲しい――。
ユウナに、自分だけを見ていて欲しい。
"あたしの武神将"と公言して啖呵を切ったあの時のように、自分もまた、"俺のユウナ"だと公言できる自信が欲しい――。
主従でもなく幼馴染みでもなく、男として。
ユウナの心と体を愛せる、唯一の存在になりたい――。
「は……ぅん……や……んっ」
僅かに、拭ったはずの酒の香りを体に纏わせ、自分の口淫で女として悩ましい表情を見せながら気を昂ぶらせているユウナ。
自分がユウナを女にさせているという自信だけが、この不安を解消する答えであり、同時に無防備な可愛い嬌態を見せるユウナに、ますます愛おしさが募って胸が苦しくなる。