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吼える月
第23章 分離
「お嬢は色々"恋愛"について難しく考えすぎているんじゃないの? 恋愛は頭で考えるものじゃないよ、心だよ、心。捨てるとか持つとか、そんなんじゃない。そんなんだったら、頭悪いあたいのテオンへの心は、恋愛感情じゃないってことだよ」
「っ………」
「あたいはテオンにドキドキして、テオンと一緒にいたくて。嫁になりたくて。身体に触れられてもいいし、そ、その……ちゅうもしたいし。兄貴やシバにはしたいとは思わないよ、そういう好きじゃないもの。気持ち悪いよ、そんなことするの。ぞっとする」
イルヒは鳥肌を立てた。
「お嬢は、猿とちゅうしてるんだろ? 恋人の唇と唇のちゅう」
「……してない」
「なんで!? 嫌なの!?」
「嫌じゃないけど……」
むしろしたいとせがんでいるのを、サクに拒まれている。
「お嬢は、猿を一番に好きじゃないとか? 他に好きな人がいるとか?」
ふと、リュカの顔を思い出す。
リュカの婚姻を夢見ていた頃、リュカにドキドキしていた。
婚姻の前の晩、あの運命の夜……、リュカに抱かれる気でいた。
だけど、抱かれようと思ったのは、抱かれたいと思ったからではなく。
これからの、リュカとの幸せのためを思ったからだ。
それまで自分は、熱を帯びたリュカの男の目に怯えていた。
唇を拒み、胸に触れる手を許さなかった。
リュカの表情が翳っても、いいよとは言えなかった。
好きだと思っているのに、身体は触らせなかった。
それくらい毅然として、男としてのリュカを拒絶していた。
だとすれば、どうしてサクは?