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甘く、深く、繋がって
第9章 乱された身体
「……じゃあ、どうして泣いてるの?」
また、目が合ってじっと見詰められる。真っ直ぐな眼差しは私を知ろうとしてくれているから。
そう感じることは出来るのに、泣いてる本当の理由を話す勇気が持てなくて。
「き、キス……」
「うん?」
「キス、してくれたのが……嬉しくて……」
その事だけを正直に伝えてみた。
斎藤さんが少し目を見開く。黙ったまま私を見て、軽く寄った眉ね。
「嬉しくて、泣いてるの?」
確認されて、コクンと頷いた。キスが嬉しかったのは本当だから。
「もっと、して欲しい?」
もう一度、コクン。
私の応えに斎藤さんが今度すっと目を細めてニコリと微笑んだ。
醸し出される柔らかな艶気に見惚れてしまう……
「そういう時はどうするの?」
「……ぇ?」

何?

小さく聞き返した私に、斎藤さんの笑みが意味深に深まって。
「いっぱい、教えてあげたよね?」
頭に浮かんだのは昨日の睦言。
「…………!」

そう、だ。何度も、何度も言わされた。

じわっと奧が熱くなる。
言わなければ、何もしてもらえない。でも、言う事が出来たなら……
思い出した身体がひくん、と疼く。

見上げる先には極上の笑み。その瞳に緋の色を見て、身震いがした。
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