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第12章 軋む心

突き飛ばそうとして、みゆきが素早く身を引いた。
「また、ね」
赤い舌が唇を上下に舐める。その仕草の卑猥さに吐き気がする。
グイッと拭った手の甲にベタリと跡を引く赤い口紅。

ちっ

思わず舌打ちをして
「またはねーよ」
感情を一切込めずに言い捨てた。踵を返して歩み去り、駅の階段を駆け降りる。
ロータリーを途中まで進み、一旦振り返ってみゆきの姿がない事を確認する。念のためコンビニに立ち寄り、遠回りをしてマンションへ帰った。