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甘く、深く、繋がって
第14章 疑心暗鬼
食欲がなくて、ヨーグルトに紅茶を何とかお腹に納めた頃、斎藤さんから電話が掛かってきた。
朝に電話してくるなんて初めての事で、手のひらに汗が滲む。
頭を過ぎったのは昨日ベランダの隙間から見た光景で……

斎藤さん、今一人だよね?

なんてことを思ってしまった。
出るのをためらいつつも鳴り止まない着信音に、深呼吸をして画面をスライドさせる。
「ぉはようございます」
緊張で手が震える。
『おはよう、真純。忙しい時にごめん』
少し掠れたテノールが響いてきた。
電話越しに聞く声はどこか甘くて、昨夜散々泣いたのにドキドキする。不安になる。
「……どうしました?」
聞きたくないのに、向こうの気配を探ってしまう。
『具合悪いところ悪いんだけど、今日も仕事終わったら真純の家に行っても良い?』

うちに来るの?

ぞわりと気持ちが波打つ。昨日は逢いたいと思ったのに、今日は素直にそう思えない。

斎藤さんから僅かに香った甘い匂い。まるでそこで待たされていたみたいに後ろから駆け寄って行った後ろ姿。その先は怖くて見てないけれど、それらが全て私の気持ちを軋ませる。

昨日、あの人と一緒に帰ったの?
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