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甘く、深く、繋がって
第20章 そばに、いる
春の暖かな陽射しも目に浮かぶのに、それが写真で見た母なのか、実際目の前で見た母なのか大事な部分はあやふやで……
田中さんの温かい家庭を嬉しく思う。楽しく聞いていたはずなのに、田中さんが帰ってバックヤードに一人残されて、私は泣きたくなってしまった。

どんなに望んでも母も父も帰ってこない。
私に温かい家庭は、ない。

…………

はぁと息を吐く。
嘆いても時間は戻らない。あの事故もなかった事になってはくれない。

ショックから抜け出せないままあちこち引っ越しさせられて、小さい頃お世話になった親戚の事はほとんど覚えてない。優しくしてもらった記憶もない。高校卒業と同時に壮ちゃんとはるちゃんは二人で自立して、私はいつも一人だった。
中三から父方の叔父夫婦にお世話になって、中退してしまったけど大学にも行かせてくれて、仕事もなんとかしてくれた。
今思うと、温かかった、のかな……
感謝、してるの。

壮ちゃんもはるちゃんも、気にかけてくれてるし

「大丈夫」
声に出して言い聞かせてみたけれど、盛り上がる涙は頬を伝って
「お母さん……お父さん……」
考えないと決めてたから、両親の事で涙を流すのはすごくすごく久しぶりだった。
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