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甘く、深く、繋がって
第2章 遭遇
到着を報せる緩い電子音の後、軽く身体が沈んでエレベーターが止まった。
こんなに遅いと正面玄関からは帰れない。エレベーターを降りた私はビルの横にある通用口へ回った。
守衛さんに結システムの営業フロアは私が最後だと伝えて外に出る。

外気の冷たさに身体が震えた。最近急に気温が下がった。

駅までは歩いて7分。
歩道も整備され、街灯もちゃんと点いている。でも今日は新月。何時もより闇が深い。

早く帰ろう。

鞄を抱え、勢い良くビルの脇から飛び出して
「きゃっ!」
右から歩いて来た人にぶつかりそうになった。咄嗟に避けたのは良いけれど、左足首を捻って倒れてしまった。

「いった……」

今までになくズキズキと痛む足首。あまりの痛さに涙が浮かぶ。
「大丈夫ですか?」
高い位置から降ってきたのは耳に心地よい柔かなテノール。
釣られるように見上げたそこに、びっくりするほど整った顔の男の人が私に手を差し伸べてくれていた。

目尻の下がった優しい目。薄茶の瞳。
心配そうに下げられた形の良い眉。
スッと通った高い鼻。
薄い唇はキュッと口角を引き結んでいる。

シンメトリーな美しさに息をのんだ。
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