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甘く、深く、繋がって
第7章 失態
「お二人でよろしいですか?」
「はい」
確認されて黒田さんが笑顔で頷く。

……帰りたい。

ちょっと強引に腕を引かれ、窓際の席まで連れていかれた。
「お決まりの頃お伺いします」
にこやかに会釈して離れていくウェイターさん。後ろ姿を目で追って、視界に入ったキッチンに慌てて顔を伏せた。

この前はみんなとだったけど、今日は黒田さんとだけ。絶対ダメだよ。

「オレ、納涼会の時遅れて二次会からの参加だったから、ここ夜来てみたかったんだよね」
メニューを広げ、上機嫌な黒田さん。
「おおっ揃ってるねぇ」
豊富なビールの銘柄に嬉しそう。
「でもやっぱり初めは日本のビールだな。真純ちゃんは決まった?」

へっ?
今、名前で呼んだ?

驚いて見上げると黒田さんは人好きのする、爽やかな笑顔で私を見ていた。
「決まった?」
「あ……アールグレイの紅茶を」
「あれ?飲まないの?」
「ぁ、あ明日も仕事なので」
「そっか。じゃ一杯だけ付き合って」
黒田さんはニッと笑ってウェイターさんを呼び、止める間もなく生ビールを二つ頼んでしまった。

こ、困った……
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