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甘く、深く、繋がって
第7章 失態
黒田さんがお手洗いに立ってビールが届く。
運んでくれたのはウェイターさんではなくて
「お待たせしました」
ニッコリ笑顔の斎藤さん。
僅かに怒気を纏ってもシンメトリーは健在で、見惚れる程に麗しい。
申し訳ない気持ちと軽率な自分への後悔と。泣いてしまいそうで顔を伏せた。
斎藤さんがテーブルに手を付いて顔を寄せてくる。
「今日、一緒に帰ろうね?」
すぐ近くから聞こえた柔らかいテノール。言外に感じるピリッとしたオーラ。
「はい」
小さく頷くとポンポンと頭を撫でられた。
「後でメールする」
それだけ言って斎藤さんはスッと身体を起こした。静かにキッチンへ戻っていく。

斎藤さん、怒ってる。
……気分害して当然、だよね。

自分の愚かさに更に落ち込んでると、黒田さんが戻ってきた。
「おっ届いてるねぇ」
笑顔で私の前に腰掛ける。グラスを一つ私に差し出し、自らも手に取ると
「今日はありがとう、お疲れ様でした」
キンッとあわせて一気に呷った。

単品料理をいくつか頼んで、残念な事に味が分からない。
でも黒田さんは悪くない訳で。なるべく笑顔で対応していたら、膝の上で携帯が短く震えた。
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