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五十嵐さくらの憂鬱。
第17章 …17
「ただいま」
そう言ってあまりにも慣れた樹の部屋に帰ってくると
どっと疲れが出て
へなへなとその場にさくらはくずおれた。
泣いた目がまだ熱い。
ふとやっと呼吸が大きくできる。
「おかえり」
樹のその声に
さくらは驚いて息を飲んだ。
出かけていると聞いていた。
「…お出かけ、終わったの?」
それに応えず、樹はつかつかとさくらに歩み寄ると
腕を思った以上に乱暴に掴んで
さくらをその場に立たせた。
驚いている間もなく
そのまま壁に押し付けられる。
何事かと思い樹の顔を覗き込むと
そこにはなんとも複雑な顔をした彼の表情があった。
怒っているような、悲しんでいるような
どうして、というような顔。
おもむろに樹が携帯を取り出したかと思うと
そこに写された写真に
さくらは言葉を失った。
「…っ…」
何かを言おうとしたのだが
言葉が見当たらず
ただ、樹の顔さえ見れずに
視線をそらせた。
「どういうこと?」
やけに落ち着いた樹の声が恐ろしい。
「さくら、こっち向いて」
そこに写った、自分と翔平の姿に
さくらは血の気が引いた。
誰かが、リークしたのは明確だった。
「…ごめ…」
その言葉を
樹の拳が壁を叩く音が遮る。
びくりと肩を震わせて
さくらは樹を見上げた。
「謝れって言ってない。どういうことか聞いているんだ」
「……」
何を言えばいいのか。
どういうことかと言えば、翔平と出かけたとしか言いようがない。
恐ろしいことに
樹はさらにもう一枚
さくらに見せた。
「…誰が…」
それしか声が出なかった。
さくらにキスをする翔平。
泣いているさくらの顔。
ズームで撮ったのだろう、だいぶぼやけてはいるが
そうだとしか言いようがない写真だった。
「…さくら」
樹は、否定してほしい風でもない。
ただただ、静かに怒っている。
これが、どれほどまでに恐ろしいことか
対峙したものでなければわからないだろう。
「さくら」
悲痛な色が混ざる声に
さくらは思わずごめんなさいと呟いた。
「謝るな」
認めたくない。
そう樹はさくらの謝るという肯定を
全身で拒絶した。
「でも、だって…」
「どうしてお前は、そうやっていつも…」
どれだけ、俺が心配していると思っているんだ。
崩れるようにさくらの肩に頭を乗せて
樹の声は静かに耳の間近で溶けた。
そう言ってあまりにも慣れた樹の部屋に帰ってくると
どっと疲れが出て
へなへなとその場にさくらはくずおれた。
泣いた目がまだ熱い。
ふとやっと呼吸が大きくできる。
「おかえり」
樹のその声に
さくらは驚いて息を飲んだ。
出かけていると聞いていた。
「…お出かけ、終わったの?」
それに応えず、樹はつかつかとさくらに歩み寄ると
腕を思った以上に乱暴に掴んで
さくらをその場に立たせた。
驚いている間もなく
そのまま壁に押し付けられる。
何事かと思い樹の顔を覗き込むと
そこにはなんとも複雑な顔をした彼の表情があった。
怒っているような、悲しんでいるような
どうして、というような顔。
おもむろに樹が携帯を取り出したかと思うと
そこに写された写真に
さくらは言葉を失った。
「…っ…」
何かを言おうとしたのだが
言葉が見当たらず
ただ、樹の顔さえ見れずに
視線をそらせた。
「どういうこと?」
やけに落ち着いた樹の声が恐ろしい。
「さくら、こっち向いて」
そこに写った、自分と翔平の姿に
さくらは血の気が引いた。
誰かが、リークしたのは明確だった。
「…ごめ…」
その言葉を
樹の拳が壁を叩く音が遮る。
びくりと肩を震わせて
さくらは樹を見上げた。
「謝れって言ってない。どういうことか聞いているんだ」
「……」
何を言えばいいのか。
どういうことかと言えば、翔平と出かけたとしか言いようがない。
恐ろしいことに
樹はさらにもう一枚
さくらに見せた。
「…誰が…」
それしか声が出なかった。
さくらにキスをする翔平。
泣いているさくらの顔。
ズームで撮ったのだろう、だいぶぼやけてはいるが
そうだとしか言いようがない写真だった。
「…さくら」
樹は、否定してほしい風でもない。
ただただ、静かに怒っている。
これが、どれほどまでに恐ろしいことか
対峙したものでなければわからないだろう。
「さくら」
悲痛な色が混ざる声に
さくらは思わずごめんなさいと呟いた。
「謝るな」
認めたくない。
そう樹はさくらの謝るという肯定を
全身で拒絶した。
「でも、だって…」
「どうしてお前は、そうやっていつも…」
どれだけ、俺が心配していると思っているんだ。
崩れるようにさくらの肩に頭を乗せて
樹の声は静かに耳の間近で溶けた。