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五十嵐さくらの憂鬱。
第18章 …18
目を覚ました時
自分がどこにいるのか全くわからなかった。

身体全体がだる重い。
お酒のせいだろう、頭痛とまではいかないが、
頭もすっきりしない。

「…起きたか?」

聞き慣れた、そして切望した声が耳元で聞こえた。
樹の深く優しい声。
声だけでその優しさに包まれている感じがした。

「どこか痛くないか?」

抱き起こされて樹の家でソファに寝かされていたことに
やっと気づいた。

「水、ください…」

樹は立ち上がると
すぐさまミネラルウォーターを持ってきてくれた。
口の中がまだあの嫌な感触で溢れている。
それを洗い流すようにゴクゴクと飲み
気持ち悪さにまた一気に飲み干そうとして
咳き込んだ背中を樹に優しく撫でられた。

安堵で身体中の力が抜ける。
見上げれば、心配そうな顔をした樹と目があった。

「何か、してほしいことはあるか?」

それに、とっさには答えられない。
何をしてほしいかといえば、そばにいて欲しかった。
ずっとずっと、このまま
幸せのままでいたかった。

もう別れてしまっているから、
それさえ叶わないのかもしれないが
強いて言うなれば、
ほんの少しでもいい、あの幸せに満ち溢れた
柔らかく甘く切ない日々の雰囲気に触れたかった。

「何でもする。言って欲しい」

樹の真摯な目に、さくらは思わず涙が出そうになった。
堪えたのだが、こらえきれず
縁から溢れ出た涙が
ぽたんと手の甲に落ちた。
その手を、樹がギュッと握り
さくらの頬にそっと触れた。

「そばに、いてほしいです。
…今夜、だけでもいいので」

当たり前だろ。
そう言うと、樹は強く抱きしめた。
壊れ物を触るような。
でもしっかりと、温もりの伝わる抱擁。
抱きしめるという行為に、こんなに愛を感じたことはなかった。

「こわ…かった…。もう、ダメかと…」
「悪い。俺のせいだ」
「違っ…。私が、先輩を傷つけたの…当然の報いなの」

でも、とさくらは嗚咽を漏らした。

「先輩…。樹先輩以外の人に触れられるなんて…耐えられなっ…」

樹はさくらを抱きしめる力を強めた。

「…そんなの、俺もだ。
さくらが、俺以外の奴に触られるなんて…耐えられない」

2人はどちらからともなく
口づけを交わした。
お互いの存在を、気持ちを確かめ合うキス。
その満足感と幸福感に
底知れぬ愛を感じて
2人はさらに深く口づけを交わした。
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