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~ 愛しい人へ ~
第2章 ~ 彼を想う ~
「あ~、食べ過ぎたな。」


私は、クスッと笑った。


「だって、樹(いつき)ちゃん、
私の分まで食べてません?」


「だって、うまかったから。」


この人は、私といる時は、自然体だ。


仕事に厳しく、バリバリと働く姿からは
想像もつかない。


「ホテルまで遠いですね~。
ちょうど、いい運動かな~、樹ちゃん」


私は、ニコニコと笑いながら
彼の左側を歩いた。


私の右手に彼の左手が触れ、指をからめてきた。


今、ここに


隣に彼がいるんだ…………。


暮れの街は、人通りも多かった。


今日は、少し寒さも緩み、


背中を丸めて歩く人が少なかった。


家路を急ぐ人とは違い、


私たちは、のんびりとホテルへと向かう。


「あ、ここ、寄って。」


彼がドラッグストアに視線を移した。


「え~、
胃薬、買わなきゃいけないほどですか!」


そんなに食べ過ぎたの?


「違う。……ゴム。」


彼がそう言って、ドラッグストアに入っていく。


「あ……。」


ついて行こうかと思ったけれど、


ゴムを買うのは…………。


今日は、お泊まりだもんね。


ラブホテルと違って、ゴムがないもんね。


さすが、樹ちゃんだな。


sexのことは、忘れないな……。


彼が、ドラッグストアから出てきた。


「栄養ドリンクも買ってきた。」


「……どれだけがんばる気なんですか……。」


私の顔が赤くなる。


慌てて、私はうつむいた。


何年つきあっていても……恥ずかしい。


「だって、七瀬、いっぱいイカせないと。」


彼に視線を向けると、


彼は、私に向かって笑っていた。


意地悪さを含んで。


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