この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
片想いの行方
第25章 動き始めた感情
「…………」
「……なにか、思い当たることでもあるの?」
新藤さんはいつもの優しい表情で聞いてきた。
高校の時、都大会で優勝したこともある新藤さんは、俺の4つ年上の大学生で
穏やかで落ち着いた彼には、水泳だけじゃなく、色んなことを相談している。
俺をよく理解し、悩みを聞いてくれる良い先輩だ。
……だけど
「……いえ、何もないです」
今回の事は……新藤さんにも言うことができなかった。
「まぁいいけどさ。
あまり追い詰めて考えるなよ?」
「……はい……」
「コーチも今のお前がスランプだって状態を見抜いたから、休めって言ったんだ。
命令なんだから従った方がいいよ」
新藤さんはそう言って笑うと
バイクに乗って先に走り去っていった。