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第42章 もうひとつの世界

まだ寝巻姿の母親が、私に折りたたみ傘を渡してくれた。


「……ありがとう」

「今日は何を作ったの？」


少し大きめのランチバックに、その傘を入れると

母親がお弁当を覗き込んでくる。


「……大したものじゃないよ」

「そんなこと言って。
美和が作る料理はすごく美味しいから、彼も喜んでるでしょ？」

「…………」


私はその質問には答えずに、立ち上がってドアに向かった。


「美和」


後ろから、母親にもう一度声をかけられる。


「……本当に、彼氏なのよね？
こんなに毎日、美和にお弁当を作らせるなんて……
……それに……」

「行ってきます」


私は振り返らずに、ドアを開けて家を出た。