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片想いの行方
第53章 彼の心
………………………………………………
「あーースッキリ!!見た?
ハゲちらかした頭とあの呆然とした顔。
ざまぁみろ!」
「……麗子。ハゲ関係ないから」
一条さんの部屋を後にして、エレベーターに乗ると
ゲラゲラ笑う麗子さんを見て、優香さんが溜息をついた。
「抜け殻みたいになってたし、彼にはもう逆ギレする気力も無いと思うけど。
早めに蓮に報告して、最後のトドメを射してもらった方がいいわよ………
って、姫宮くん。聞いてるの?」
「…………」
優香さんの問いにも、ヒメはエレベーターの外を見たまま答えない。
一条さんへの警告を言い放った後、部屋を出てから一言も話さなくなってしまった。
「……あの……」
私の声に、3人が同時に振り返る。
右手は麗子さん
左手は優香さん
繋がれた手から2人の温もりが伝わってきて
止めたはずの涙が、また溢れてきてしまう。
学生以来、ずっと会っていなかったのに
危険を顧みず、自らの立場を投げ出してまで助けに来てくれた。
……どんな言葉で、この想いが伝わるのか分からない。
だけど
私はぎゅっと手に力を入れて、震える声を絞り出した。
「……来てくれて……
……救い出してくれて……
……っ ありがとうございます……」