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片想いの行方
第53章 彼の心

「…………!」

「待ちなさいっての!」


エントランスに向かうヒメを、麗子さんが呼び止めた。


「あんたさっきから何1人でブスっとしてんのよ。
せっかく気分爽快だってのに、腹立つわ~」


私はアンナから体を離して、慌ててヒメの方へ向き直る。


「……ヒメ……」


私の声でヒメは立ち止まり、ゆっくり振り返ると

真っ直ぐ私を見つめてきた。


「……美和。
お前は何も悪く無いし、間違ってもいない。
だけど、敢えて言わせてもらうなら」


その言葉に、奈々さんとアンナも顔を上げる。


「ひとつは、過去ばかり見ていたことだ。
これから先まだ何十年って人生が続くのに、自ら未来を変えようとしなかった」

「…………!」

「諦めて、昔の楽しかったことを振り返ってるだけじゃ、何の解決にもならないんだよ」

「ちょっと、止めなさいよ」


ヒメが話をしている途中で、優香さんが口を挟んだ。


「それが出来なかったんだから仕方ないじゃない。
誰もが姫宮くんみたいに、うまく立ち回れるわけじゃないのよ」

「……………」


……ううん、違う。

ヒメの言う通りだよ……

優香さんの言葉にみんなが沈黙する中、麗子さんが口を開く。


「……で? 続きは?」


ヒメは私から目を逸らすと、静かに言った。


「……もうひとつは
もっと早く、俺達に助けを求めなかったことだ」


「…………!」


「俺達を信じてくれていたなら、すぐにでも助けに行けたんだ。

美和の周りには、こんなにも手を差し伸べる仲間がいる。

美和は1人じゃない。

……その事を、これからは絶対に忘れるな」
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