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片想いの行方
第54章 再会
「…………」
他にも、クリスマスツリーを眺めている人はいっぱいいる。
空港からのバスを降りた後の、スーツケースを持った人達も多い。
だけど
この時の私の目には
その人だけが、くっきりと浮かび上がって見えた。
「……………っ」
心臓がドクンと鳴り響く。
周りの人よりも背が高くて
コートの下に細身のスーツを着ている。
黒い短髪も
小さくて精悍な顔立ちも
………変わっていない。
「…………!」
近付きたいのに、足が竦んで動けない。
………こんな偶然が、あるわけがない。
路線が多い都内主要の駅だからって
空港からのバスが行き来するターミナルだからといって
少しでも時間が違っていたら
この場に足を運ばずに、時計台の下で待っていたなら
………彼の姿を見つけることはなかった………