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片想いの行方
第59章 弱さと痛み
……どうしてこんな惨い事ができるの?
絶望の淵から救い出してくれたのに
クリスマスの夜、心に響く歌声を聴かせてくれたのに
……恩を仇で返すような、酷い仕打ち。
彼の真の心が分からないとはいえ、私を見るあの瞳に、きっと嘘はないはずなのに
彼がもっとも意識する相手の所へ、何も告げないまま来てしまうなんて
………ヒメの望むことは、なんでも叶えたい。
私ができることがあるなら、どんな事でも力になりたい。
だけど
本当はずっと、蓮くんを忘れられなかった。
そして、真っ直ぐな想いを言葉にしてくれた蓮くんに、再び心を惹きつけられた。
だから……彼の腕の中にいる私はようやく………
「 『 美和 』 」
「……………!!」
ハッと我に返ると
蓮くんが私の頬を撫でながら、切ない瞳で見つめていた。
………今、名前を呼んでくれたのは…………
「……………っ」
溢れそうになる涙を堪えて、ぎゅっと蓮くんに抱きついた。
「……蓮くん……」
強く、強く、その身体にしがみつく。
「………優しくしなくていいから。
お願い、もっと強く抱きしめて………」