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片想いの行方
第60章 裏HERO
空しい皮肉を言った後、一条さんは再び私を見た。
「……悪かったな、今まで」
「…………!」
一条さんは、切ない顔をして続ける。
「俺は母親の手料理なんて、生まれてから一度も食ったことが無いから。
数々の高級料理を口にしたが……
美和の作る料理は……どこか気持ちがこもっているような温かさがあって
好き嫌いもきちんと把握してくれるから。
………美味かった」
……穏やかな声で、初めて聞いた私の料理を褒める言葉。
虚ろな目で、どこか懐かしむように微笑む顔。
「……………」
全然響かない。
ドクドク鳴り響いていた心臓が、スッとするように落ち着いた。
………私に、何を言わせたいんだろう。
足の怪我の原因を突き付け、嘘をついたまま私を縛り付けて
ヒメ達が助けてくれなかったら、これからもずっとこの男の手の中にいた。
……どれだけ恨んでも、憎んでも、あの2年の日々は返ってこない。
「……一条さん」
謝罪を述べたことで、どこか紅潮した笑みを浮かべた一条さんに向けて
私は静かに口を開いた。