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片想いの行方
第63章 2人の蓮
「可哀想な弟~~。忘れ物よ」
ダウンコートを持って、店の出口に向かおうとすると
ロフトから姉貴が何かを投げてきた。
「もったいないじゃない、この店のゴミ箱に捨てていたなんて」
「…………!」
「帰ってヤケ酒するなら、観賞用として見つめてれば?」
~~~地獄へ落ちろ!!
美和に渡せなかったその小さな箱を、乱暴にポケットに突っ込んで
俺は心の中で呪文を繰り返しながら、フロアを後にした。
夜の10時。
クリスマスのイルミネーションが取り外された街並みは、どこか寂しげな空気が漂っている。
……って感じてるのは俺だけか………
空しいツッコミを自分に入れて、マンションまでの道を1人歩き続けた。
………美和に出逢う前の俺に、また戻ればいい。
美和が見つめる相手が、蓮だとしても
これからも彼女の近くにいられる。
寂しいなら、表面だけでも誰かに傍にいてもらえればいいし
美和への想いが溢れて止まらなくなれば、歌うことで吐き出せばいいんだ。
………簡単だろ。