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異常性愛
第28章 媒介
----(くそっ!)
心の中で舌打ちした。
亭主はわざと私の名前を書かず、仮契約書を宅配させたのかもしれない。
担当名の無い荷物は上司のデスクに回される。
捺印された仮契約書を上役が知れば、私と亭主の間だけでこの話を潰せない。
工事発注を受ける以外に、社内で私の立場は無い。
デスクに戻り、包みを開けた。
有名百貨店の包装紙を破ると、紺色の毛羽立った薄いケースが出てきた。
ドイツ製の高級ペンだった。
本契約書にサインするという意思表示だろう。
あの夜、亭主の要望を果たせなかった私は、契約を無いものとしてあの家を出た。
その翌日、子を授かったことを晶子に知らされ、私は今後の身の振り方を決めた。
優子と別れ、亭主や真美とも縁を切ることだった。
それを知らず亭主は、破棄されるはずの仮契約書を返送してきた。
亭主も男なら、あの夜私が真美を抱けなかった理由は解るはずだ。
だから私が帰る際にも顔を出さなかったのではないのか。
子を授からずとも、真美への種付けなど今の私にはできない。
それが、あの夜の答えだ。