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異常性愛
第29章 相克
『私 失恋しました。
帰って泣きます。
ここで泣いちゃうと困るでしょ。』
『そうだね。』
真美は私の前に立ち、手袋を外した。
『大輔さん、握手。』
真美の手をとった。
諦めの混じった弱い握手だった。
『ありがと。大輔さん。』
真美は手を放すと礼をひとつして、駐車場に上がる階段に向かって小走りに駈けていった。
クシャクシャと落ち葉を踏む音が遠ざかる。
亭主に怒鳴られ、出て行けと言われた真美を呼び止めた、あの時と同じ感情が湧く。
----真美・・・行くな。
そんな辻褄の合わない自分の心に言い聞かせた。
今後私は真美のことについて何も責任を取れない。
今、真美を呼び止めることはできない。