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第30章 潤む瞳

　　
私は自分の意思を決めた。
自らを省み、妻と子のために生涯を捧げる。
それは人として全うなものであり、一見すれば当たり前のことだが、その究極は自己の幸福の為の利己主義だ。
優子との人間関係において、私の意思決定は非道以外の何物でもない。
その利己主義を押し通し、私は愛する優子を悲しませる。


その上、私の心の中には小さな嫉妬があった。
私と別れた後に、優子を他人に奪われるという嫉妬だった。

優子の美貌と器量なら、男など掃いて捨てるほど寄り付いてくるだろう。
その中の何人かと肉体関係を持ち、私と同じように優子の愛を感受する男が、私と別れたその先にいると思うと無性に腹が立つ。