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異常性愛
第31章 羽化
店を出た私達は、空港に向かって黙って歩いた。
私は優子のスーツケースを引き、優子は私から少し離れて歩いている。
冬の寒空の下、足取りは重い。
ゴーッと鳴るスーツケースのキャスターの音が、開いていくファスナーのように、私と優子の足跡を分けていく気がした。
こういう時どうしたらいいのか、どちらが何を話せばいいのか、面と向かって別れ話をした経験の無い私には全く判らない。
優子は植え込みの山茶花(さざんか)の葉をピンピンと弾きながら、つま先を投げだす度、何かを数えるようにコクンコクンと深く頷いて歩いている。
私は黙って歩く以外にアクションが起こせず、優子の歩調に合わせて少し後ろを歩いた。