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異常性愛
第31章 羽化
   
『ついて来い。』

泣き止まぬ優子の手をとり、降(くだ)りのエスカレーターに向かった。

優子は私の手をしっかり掴み、小さな身体を左右に揺らし、泣き疲れて呼吸が整わぬまま息を切らし、歩みの速い私に懸命に歩調を併せた。

長いエスカレーターを早足で降り、ロビーに着いた所で優子の肩を抱き寄せ、化粧崩れした優子の顔を隠した。

小走りでロビーを抜け、クリスマスツリーの前を横切る時、私は心の中でツリーにツバを吐いた。

----(なにが聖人だ!)

一瞬でも神仏に頼った私がバカだった。
優子を救えるのは私だけだ。
紙切れや石像に出来ることは何も無い。

広い駐車場で会社のバンが見えた頃には、私は優子を抱えるように走っていた。


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