この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異常性愛
第31章 羽化
『ついて来い。』
泣き止まぬ優子の手をとり、降(くだ)りのエスカレーターに向かった。
優子は私の手をしっかり掴み、小さな身体を左右に揺らし、泣き疲れて呼吸が整わぬまま息を切らし、歩みの速い私に懸命に歩調を併せた。
長いエスカレーターを早足で降り、ロビーに着いた所で優子の肩を抱き寄せ、化粧崩れした優子の顔を隠した。
小走りでロビーを抜け、クリスマスツリーの前を横切る時、私は心の中でツリーにツバを吐いた。
----(なにが聖人だ!)
一瞬でも神仏に頼った私がバカだった。
優子を救えるのは私だけだ。
紙切れや石像に出来ることは何も無い。
広い駐車場で会社のバンが見えた頃には、私は優子を抱えるように走っていた。