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異常性愛
第8章 掌
ガチャンっと勝手口が閉まる音を最後に、晶子の周囲から物音が消え、低く小さく唸る冷蔵庫のモーター音が晶子の耳に纏わりついた。
晶子は膝を抱えたまま前後に身体を揺すり、堅く目を閉じていた。
孤独感と喪失感が晶子を支配する。
それを振り解く気力は残されていなかった。
堪えきれない涙が次々に頬を伝う。
やがてその涙はポタポタと畳を濡らした。
空は真っ黒い雲に覆われ、なおいっそう居間は暗さを増した。
ポツポツと雨が窓を叩き始めた。
やがて本降りになった雨音は、
暗闇と共に晶子を包んだ。
第八章 -掌- 完