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異常性愛
第13章 塊
ある時こんな話を聞いたんだ。
音楽に酔い、舞い踊るダンサーは、
耳の聞こえないものから見れば、
精神障害者にしか見えないってね。
私はハッと気付いたよ。私と一緒だと。
何も見えてなかったんだ。
耳を塞いで世の中を見ていたんだ。
不治の病で苦しむ患者を医者は治せない。
必死で治そうとしてもダメなんだ。
医者に出来るのは治療だ。
薬の処方とオペ技術の行使だな。
生を奪おうとする悪魔には私らは非力だよ。
彼らが必要としてるのは生きる希望だよ。
生への執着を見せない患者は絶対に助からない。
いくら治療してもね。
だが、生きたいと執念を燃やす患者から
ガン細胞が消えていくのを、私は何度も見ている。
それからだよ、本気で生を意識したのは。
彼らを救うのは愛や宗教じゃない。
命への執着なんだ。
つまらぬことに彼らは拘らない。
固執しているのは自分の生。その一点だ。
私もキミも死ぬまで生きるんだ。
期間限定のこの世という舞台で、
涼子や母君に捕まってる暇なんて無いんだよ。』