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異常性愛
第13章 塊
私は何も言えなかった。
命を扱う現場に身を置いた亭主の哲学は、やはり生を基点にしたものだった。
亭主の提言に否定も肯定もできないまま、私たちは駅に到着した。
シートベルトを外し、私の肩をポンと叩いて亭主はクルマを降りた。
私は窓を開け、スーツの襟を正す亭主に礼を伝えた。
『ありがとうございました。』
亭主は、私に見せたことの無い、優しい笑顔に顔を崩すと、
『力を恨むな、味方につけろ。』
そう言い、
礼も言わず、賑わい始めた駅前の雑踏に消えた。