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第15章 コンジャンクション

　　
『確か、いなくなる前の晩だったと思う。
　一緒にふろ入ったんだ。母ちゃんと。
　で、俺に聞くんだ。
　親父と母ちゃん、どっちが好きだって。

　迷ったとこまでは覚えてるんだけど、
　どう答えたか覚えてないんだ。』

『答えにくいね、ディーだったら。』

『母ちゃんは自分だって言われたかったのかな？
　親父って言ったほうが安心して出てけたのかな？
　それを考えたことがあった・・・。
　
　もし親父って言ってたらと思うとね・・。
　それを母ちゃんどんな・・・気持ちで、
　聞いたのかなって・・・。』

胸に詰まったものがドロドロと溶けるように型崩れ、心に張った柵の外に溢れていくようだった。
気がつくと溜まった涙がこぼれていた。
母に対しての罪悪感が、私に圧し掛かっていた。


私の涙を拭ったのは優子だった。
優子は目に涙をたたえ、それでも微笑み、「うんうん」と私の思いに理解を示した。