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異常性愛
第16章 萎凋
まともに就学していない無学文盲の父親は、遊び歩き自由に生きていた。
そのころ少年の母親に出会い、少年の姉が生まれた頃、父親は信仰宗教に入信する。
熱心に信仰する父親は母親を入信させ、次いで祖母も入信させる。
近隣にも説法して回り、近所では父親の信仰を疎ましく感じる住人もいた。
それでもお構い無しに信仰に邁進する父親は、教団で役職を与えられ、信者として出世していく。
父親のような信者が猛烈な布教活動をすることで、教団は成長していく。
教団はいつしか市民権を獲得し、社会の中に溶け込んでいった。
父親のような人間、つまりは無学、貧困、病、不和にあえぐ人々を取り込み、強固に組織化された教団は日本有数の宗教集団となった。
日本経済が右肩上がりに猛進する中で、国民生活は豊かになり、モノがあふれ、人々の所有欲を満たしていく。
その経済的な恩恵を信者は信仰の賜物と錯覚し、さらに信仰心を深め、教団に傾倒していった。