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異常性愛
第16章 萎凋
少年の家庭では特に食が軽んじられた。
両親の離婚以来、家に帰っても彼の食事が用意されていないことが増えた。
長兄と姉は既に独居していて、家にいる子供は少年と腹違いの幼い弟だけだった。
さすがに弟の食事は継母が用意していたが、少年の食事は何故か軽視された。
独立心の強い少年は、小学生の頃から知り合いの新聞店でアルバイトし、食い扶持は自分で稼いでいた。
少年にとって既に家族は同居人としての存在でしかなく、世間で言う家族愛といったものに少年は全く無縁だった。
荒んだ家庭内で孤立する少年には、そうならざるをえない別の理由があった。
彼がこの世に生を受けた当時の日本は、高度成長期の終盤で国民のほとんどが所得を増やし、恵のある生活を希求する社会が構築されていた。
実の母親がいたころ父親は仕事に就き、母親もパートタイマーとして働き、世間並の生活を送っていた。
ただ他と違ったのは、当時流行っていた新興宗教に父親が肩入れし、熱心に教団活動していたことだった。