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異常性愛
第16章 萎凋
それ以来、少年にとって奇妙な来客が続いた。
母方の親族が次々に来訪し、憮然とする父親に母方の親族が頭を下げるという場面を、少年は何度か目にした。
やがて母親は入院するという名目で、少年の前から姿を消した。
何も知らない少年は母親の帰りを待ったが、いつまでも戻らない母親と、その見舞いにも行かない家族の態度に、少年は少しずつ両親の離婚に気付き始める。
それを決定付けたのが父親の再婚だった。
再婚を告げられるまで、少年は母親が入院していると思い込まされていた。
大人の都合を受け入れる事しか許されず、少年は傷ついていた。
だが幼い少年には、それが心の傷だと気付くことができず、成長途中の無垢な心は本人すら気付かないまま傷口を広げていった。
相変わらずまともな職に就けない父親は、きちんとした職能を身に着けぬまま中年を過ぎ、惨めな生活を家族に強いることになる。
それでも教団はそんな父親を暖かく迎え入れ、信仰を促していく。
信仰への迷いがなく、元来素直な性格の父親に、教団はもはや生きる場所として欠くことの出来ないものとなっていた。