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異常性愛
第16章 萎凋
狂信とも言える信仰心は、他を批判し、そして認めない。
父親にとって信仰こそが全てであり、教団創始者こそが命を賭して仕えるものだった。
心の傷を癒せずに成長していく少年は、父親の信仰によって居心地の悪い生活を強いられた。
幸せになるのだと仏壇の前に座らされ、大声で経文を唱えさせられ、毎日のように会合に連れまわされ、扇子を振って教団歌を絶唱させられる。
そんな洗脳ともいえる教団活動に、幼い少年はうんざりしていた。
表面上は信仰に従順な姿勢を見せたが、内心ではこの団体に疑問を持ち、蔑視していた。
家族が信仰に熱心になるほど、少年は冷静になっていった。
少年が教団に傾倒しなかったのは、母親との離別による父親への不信が原因だった。
母親と共に消えた幸福は、そのどちらもが少年のもとには戻ってこなかった。
信仰によって幸福になることはないと少年は悟り、またその思いは頑なであった。
そして信心するほど不幸になっていく父親を軽蔑し、憎んだ。
少年の中で父親の威厳は皆無に等しく、それに増して理不尽に人を従わせる力を、
少年は忌み嫌った。