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異常性愛
第16章 萎凋
雅美は素直に少年を愛していた。
はっきりと答えられない、はにかむ少年を前よりずっと好きになっていた。
人を愛する心地よさを雅美は知っていた。
荒む少年に同じ心地よさを知ってほしい、雅美の母性が自然に少年を思いやる気持ちに変化していった。
『あしたもおべんと作ったげる。』
『うん。ありがと。』
『じゃいくね。』
雅美は自転車に乗り、境内を出る前にもう一度振り返り、大きく手を振った。
夏の夜風になびく雅美の黒髪は、道路灯に照らされ、白く艶めいた輝きを見せた。
とっぷりと暮れた夏の夜空に、飛行機雲が薄っすらと二本線を引く。
騒がしかった蝉の声が、リーリーと鳴く草むらの虫にとってかわり、
土臭い香りが少年に夏の終わりを感じさせた。
第十六章 -萎凋- 完