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異常性愛
第17章 つづら織りの海
ホテルでの乱交から一ヶ月が経った。
初秋の夜は過ごしやすく、エアコンを廻す機会もぐんと減った。
作動音のない寝室は、別の家電製品が出す高周波の微細な音を、ツーと耳の奥に鳴らし続けた。
最後のメールを受信したあの日以降、涼子からの連絡はない。
もう亭主の家を出たのだろうか。
あの家からそう遠くない町に顧客があったが、そこへ立ち寄った際も、亭主の家には足が向かなかった。
いまだ着信拒否をしているのかどうかもわからない。
あれ以来、涼子の番号を携帯電話に表示させることはなかった。
すでに新しい番号に変わっているかもしれない。
それを明確にする勇気が無かった。
迷いを払拭するための場当たり的な行動で、涼子との微かな繋がりを失いたくないという気持ちが、心のどこかにあった。