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異常性愛
第17章 つづら織りの海
勤め始めてから、滅多に地元の連中と会うことがなかった。
十五年前、確かに石川と殴りあった。
それに雅美が絡んでいたようだが、私はそれをやはり思い出せなかった。
血の気の多い時期だ。
当時、それと似たようなことは、しょっちゅうあった。
雅美とは高校生時分のときに別れてから会っていない。
名前を聞いて雅美を思い出したぐらいだ。
涼子のこともそうして忘れていくのだろうか。
今の私には、涼子を忘れた自分を想像できなかった。
私の名前が呼ばれた。
手渡された謄本の写しには、母の欄に斜線が引いてあった。
除籍謄本には母の本籍地が記されていて、そこから母を辿ることができそうだった。
それを鞄にしまい、役所を後にした。