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異常性愛
第20章 綾繋ぎ
私の父方の祖父にあたる人物は、働き盛りに病死している。
祖母は女手一つで父を育てた。
祖母は気のいい優しい人だが、無知で教養がなかった。
経済的な困窮で体を売ったこともあるという。
当時の社会状況を鑑みれば、仕方の無いことかもしれないが、片親で育った父も相応に辛酸を嘗めたことだろう。
悲しみは、恨みや不満を募らせる。
それが父の暴力の起因となっている。
困難をかわす知恵を持たない父は、行き詰まり苦しんだだろう。
人は行き詰れば救いを求める。あるいは死を選ぶ。
母は一度は死を選んだ。
だがそれも許されず、今日まで懺悔の道を歩んだ。
父は信仰によって自分だけを救った。
信仰による救いは利己的なものに過ぎない。
父の一番大きな罪は、家族の個人思考を奪ったことだった。