この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異常性愛
第28章 媒介
『アキ、水くれ。』
ガラガラに荒れた喉からはまともな声が出ない。
裏返った私の声に晶子が笑う。
『ふふっ、なぁにそれ?飲みすぎた?』
『わりと飲んだ。』
手渡された水を飲み干し、頭を振って目を覚ました。
おぼろげに昨夜のことを思い出し、シャツの襟や脇の下を嗅いだ。
二日酔いの男の匂いが鼻をついたが、それ以外に浮気の痕跡は残っていなかった。
『何時だ?』
『お昼過ぎてるわ。何か食べる?』
バルコニーで洗濯物を干しながら振り向いた晶子は、冬の日差しに眩しく輝いていた。
私と同じく寒がりの晶子が、上っ張りを羽織らずバルコニーに出ている。
今日は暖かいようだ。
『うどん、食べたい。』
『いいわね。じゃ、うどん、いこ。』
言葉を覚え始めた幼児のような、二語文会話で外食することが決まると、満面の笑みを浮かべた晶子は白い歯を見せた。