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カウントダウン
第6章 ウ 
「5年前。私が女の子の反応が怖くて、付き合いを内緒にしておくように
お願いしたの」
「ふ~ん」
「でも自分から言い出したのに。
人前で話せなかったりして、寂しくなって」
「うん」
「メールも挨拶ぐらいだったし。だんだん付き合っているのが
現実に思えなくなって」

涙が流れる。
あの時泣けなかった涙だ。

「そんな時、蒼くんが女の子に好きな子はいないっていうのを聞いちゃって」
「え。それはちがっ」

蒼くんが慌てて否定しようとした言葉を
元カレが手で制した。

「誰とも付き合わないよ。って言ってて。
あぁ、私と付き合っているのは一人よがりだったのかな。って」
「里香。それは違うっ。
里香は俺たちのことを秘密にしておきたがったから。
誰にも好きな子がいるって言えなかったんだ」
「うそ」

「俺が好きな子がいると言ったら、あの子たちは
絶対に突きとめようと必死になってたよ。
もし里香の事があの子たちにバレたら。里香に何かあったら。
俺は自分を許せないと思ったんだ」

「おいで」
そっと蒼くんが伸ばした腕の中に
自然に引き寄せられてすっぽりと私を包み込んだ。

「メールがそっけなかったのは。
どんなメールをしたらいいか分からなかったから。
本気だったから、嫌われるのが怖くて。
16歳の俺は何を話したらいいのか分からなかった」

本気だったから。
そう言ったところでぎゅっと私を抱きしめた。
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