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監禁DAYS
第4章 今から逝かせて

 下北沢の北口を少し入ったところ。
 人の雑踏も喧騒も背景になるくらいの奥まった喫茶店で見かけた。
 カウンター席でエスプレッソをぼんやりと飲む姿に惹きつけられて。
 長い髪はアップにしていたせいか、一瞬誰か気付かなかった。
 ただ、美人がいる程度に。
 柊美月。
 高校時代から随分と雰囲気が変わった。
 いつも横に連れていた妹とはかけ離れて。
 大人びた空気が服と同じように馴染むほど。
 少し離れたカウンターに腰掛けて、カプチーノを頼む。
 何を考えているんだ。
 長い睫毛を下に向け、時々溜息を吐いて。
 仕事帰りにしては余所いきの服で。
 とん、と肩を叩かれて振り返る。
「何ぼーっとしている」
「別に」
 仲介人の男が現れる。
 自分みたいな裏稼業の人間にとってはこいつのような存在がないと食っていけない。
 次の仕事の資料をばさりと目の前に広げられる。
「……男か」
「お前は別に専門ないだろ。文句言うな。報酬は高いぞ今回は」
「はいはい」
 パラパラと少年の顔が張り付けられた資料を捲る。
 いったい何をしてこの少年が標的にされたなんて知ることは出来ない。
 ただ、自分がこれからこの少年に何をしなければならないのかを確認するだけだ。
「場所は」
「埼玉だ」
「……五日でいいの?」
「三日。依頼主が死に際だけ見に来るそうだ。それまでに派手に傷つけとけ」
「趣味悪ぃ」
「依頼主なんてキチガイしかいない」
 そこで男がピンと、カプチーノのカップを指で弾く。
「そのキチガイどものお陰で食っていけるんだから文句ばっか言うな」
「はいはい」
 勢いよく温いそれを飲み干してチラリとカウンターをみると、美月はいなくなっていた。
 何か、勿体ないよな気もしたが、すぐに仕事に切り替える。

 まさか、そのうち標的になるなんて。

 考えもしなかった。

 ただ、再会できればいいな。

 その程度で。

「この、女……?」
「ああ。知り合いか?」
「いや……似てるだけだ」
 男が眉を上げる。
「昔の女に?」
「いや……いい。気にすんな」
 喫茶店の薄暗い照明の下、虚ろ気にコーヒーを飲んでいた美月が過る。
 一体何をした。
 なぜ、自分のところに名前が回ってきた。
 見たくなかったのに。
 妹が死んだばかりのこのタイミングになんて。
 見たくなかった。
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