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crazy night
第8章 霧の中で
「どうしたんだよ」

「ぁ…えと、お見舞いに、来ました…」

自分でも何しに来たかわからない有紗はとっさに取り繕う。

「へぇ…?まぁどうぞ。入りなよ」

勧められるままに部屋に足を踏み入れた。

不思議と有紗は恐怖を感じなかった。

「あの、なんていうか…私を庇ってくれたみたいで…本当にありがとうございました。」

「ん?あぁ、今日退院してきた。良いよ、俺が勝手にしたことだし。有紗ちゃんが無事で何よりだよ」

「あら、あんな酷いことしておいてよくそんなこと言えますね」

ばつが悪そうな顔をした士郎を見て、有紗はふふっと笑ってしまった。

私、強くなったかもしれない。

「まったく。見舞いに来たのか嫌味を言いに来たのかどっちなんだよ」

「両方ですよ~」

お茶を淹れようとする士郎を座らせ、有紗は急須を手に取った。

「…ありがとう、俺が目を覚ますまで毎日来てくれてたんだって?」

有紗の動きがとまる。
看護師さんから聞いたのであろう。

「私じゃないです。」

有紗はとっさに否定した。

次の瞬間、後ろから士郎に優しく包み込まれた。

「…何かあった?玄関に立ってるとき、見舞っていうような顔してなかったけど。」

温かい。
大粒の涙が溢れる。

「私を、めちゃくちゃにしてください…」
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